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「チャオ、ジョルノ」
「…………」
「ジョールノ!」
「…………あ、トリッシュ。来てたんですか」
 目の前には同い年の少女、トリッシュ・ウナが。
 悩みに突っ伏していてトリッシュが来ていたのにまったく気づかなかったジョルノははっとなって顔をあげた。
 そんな珍しいジョルノの表情を見てトリッシュは思わず噴き出す。
「あはは!」
「……笑うなんてひどいですね」
 書類を整えながら溜め息をつくジョルノ。恥ずかしい表情を見られたが気にしてないといわんばかりに冷静な素振りをとる。
「ごめんなさい。あまりにも珍しい顔をしていたから。……うとうとしてるジョルノの顔なんて、もう二度と見れないかも」
「……君こそ珍しいですね、こんな日に来るなんて」
 無理やりに話題を変えようとジョルノは話をそらす。
「ちょっと時間が出来たから。あっ、お土産買ってきたの!」
 そう言ってトリッシュは目の前の机に白い箱を置いた。ほんのりと甘い香りがする。
 トリッシュはにこにこと笑みを浮かべながら箱を開けた。
 中に入っていたのは色とりどりのスイーツたち。
 苺と生クリームのミルフィーユだとか、チョコレートでコーティングされたケーキだとか、ジョルノの好物であるプリンもあった。
 プリンに思わず目がいったジョルノだが、意外と甘味が好きだということは誰にも言っていない。
 もちろん、中でもプリンが好きだなんて。誰にも言ってはいないのだ。
「ジョルノはどれにする?」
「……いや、僕は」
「あ、もしかして甘いものは好きじゃなかったかしら。ごめんなさい、なにも考えずに買ってきちゃったわ」
 違う、と否定したいが無駄なプライドが邪魔して言葉が喉でつっかえる。
 ケーキの入った箱は閉じられ、プリンはジョルノの目の前から姿を消す。甘い残り香だけがただよう。
「じゃあ、これはミスタとピストルズにあげてくるわね」
 トリッシュは申し訳なさそうな笑顔を浮かべてそう告げる。
 ミスタもピストルズも嫌いなもの以外はなんでも食べるタイプだ。
 ジョルノが手をつけなければ当然すべて食べてしまうだろう。
 トリッシュは箱を持ち上げ、ジョルノの部屋を出ようと振り返る。
「あっ……」
「ん、どうかしたかしら?」
「あ、えーと……あの、プリンだけ、プリンだけ残しておいてください……」
 トリッシュから目を逸らしながら「プリンだけは」と伝える。
 そんな精一杯の言葉を赤面しながら搾りだしたジョルノに、思わずトリッシュは笑ってしまう。
 同時に、彼にも同年代らしいところがあってほっとする。
「ふふっ、わかったわ! 別に分けて冷蔵庫にしまっておくから」
「……ありがとうございます」
「ふふ、どういたしまいて」
 ジョルノは未だに目をそらしたまま、礼を言う。
 ぱたん、とドアが閉まってトリッシュは部屋からでていく。
 それから数秒してジョルノは深い溜め息をつく。
 好きな物を食べるのにこんなにも苦心する少年がいるだろうか。
 ジョルノは机の上に広げられた書類を見、整えながらぼんやりと考え事をする。
(あれはこの書類整理が終わったら頂きましょう……)

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