年明け早々、本丸はひどい有様であった。居間に転がる酒瓶、雑多に倒れこむ大きな図体、そして食い散らかされる料理の有様。正月ぐらいは無礼講であると審神者が口にすると、刀剣たちは宴に酔いしれ、楽しみ、そして散らすだけ散らかしてもう夢の中だ。
それをいつも通りの状態に戻すのは誰か。正月にも気を抜くことのない真面目でマメな性格の刀剣たちである。テーブルに出された料理や皿を片付け、酒瓶を回収し、寝転ぶ刀剣たちをそれぞれの寝室へと誘導する。
たまにはこんな宴会もいいのかもしれないが、それにしたって羽目をはずし過ぎであると、この本丸の近侍である歌仙兼定は胸からせり上がってくるうんざりとした気持ちをため息として吐き出した。
歌仙は本丸の面々の中でいえば至極真面目で、神経質な性格である。宴が始まる前から片付けのことは容易に想像できたが、たかが数振りで片付けをこなして本丸を元の状態にすることには時間がかかった。酒を口に含んだせいか、ぼんやりりとした頭の中、厨を管理する者としての使命感だけでどうにか片付けを八割方終わらせ、ごく少数の苦労人の刀剣たちは厨で各々解散した。
先ほどまで刀剣たちが騒いでいた部屋はしんと静まり返っており、ひとり残らず部屋に戻ったようだ。この宴の主催者とも言える己の主人、審神者の姿も見えない。
おそらく部屋に戻ったのだろうとは思うが、近侍としていささか彼女のことが心配であった。ちゃんと部屋に戻っているかどうか確認してから自室に戻ろうと思ったその時、なぜか自分の部屋から寝息が聞こえることに歌仙は気がついた。
……大方、誰かが部屋を間違えたのだろう。そんなにも酒に呑まれるとはどこの阿呆なんだと呆れつつ歌仙は障子を開けた。
くたびれた体で布団を敷くのは面倒だろうと想定して敷いておいた布団では、見覚えのある女人が心地よさそうに寝息をたてていた。歌仙はしばらくその女性の姿を呆然と見つめ、その場に立ち尽くす。
差し込む月明かりに照らされた寝顔は、起こすのが勿体ないほど気持ちが良さそうだが、枕にしがみついて掛け布団の上で寝ているため、このままでは風邪をひいてしまうだろうとのん気にそう思った。少し考えて、そういう問題ではないと、歌仙は眉間にしわを寄せて彼女に近寄る。
「主! ここは君の部屋じゃないだろう!」
「ん、ん……かせん……? おはよう……」
「おはようの時間じゃないよ。まったく、君は仕方のない人だ……」
眠たい目をこすり、審神者は歌仙に焦点を合わせ、にへらと笑みを浮かべる。起き上がる気はまったくなく、歌仙に腕を掴まれ上半身を起こすように促されるが、当の本人にはまったくそのつもりはない。力のはいっていない体というのは案外重たいものであるが、歌仙の腕力に引っ張られれば無気力な体もさすがに起き上がる。
審神者は瞼の重たそうな目でゆっくりとまばたきをしながら歌仙の脚にぎゅっとしがみつく。突然の行動に歌仙は戸惑い、若干後退るが、しがみつかれていて思ったように体が動かない。
薄い寝間着越しに審神者の豊かな双丘が脚に密着した。まるで酒瓶に抱きついているかのような審神者の手はしっかりと歌仙の脚を掴んで離さない。
「主っ……離れるんだ」
「やだあ、かせんといっしょにねる」
普段は聞くことのできない審神者の甘えた猫なで声に暗がりの中で歌仙は耳まで赤くなる。審神者は主ではあるが、歌仙にとっては同時に恋人でもあった。
彼女は閨であっても甘えたりするのは不得手で、夜の営みに対しても消極的である。行為自体を拒むわけではないが、どうにも開放感がない。不満とまではいかないが、歌仙はそれがすこし面白くなかった。
恋人なのだから閨の中でぐらい自分に甘えてくれたっていいのに、もっと溺れてくれればいいのにと思ったことは数えきれないぐらいある。主である自分を捨てきれない審神者にどうしようもないわだかまりを抱えていたのは事実だ。
しかしそれが酒で解除されるのならそれはそれで問題である。自分が見ていないところで他の男に同じことをしていると考えただけで頭の中が怒りで沸騰してしまいそうだ。これは彼女のためにも自分のためにもよろしくない。
酒に呑まれて自分の見ていないところでなにを仕出かしてしまうのかわかったものじゃない。歌仙は痛くしないように自身の脚に絡みつく審神者の体を引き剥がそうとするが、逆に審神者に脚をとられ、その場に転がされてしまった。
尻もちをつく形となってしまった歌仙は、酔っ払いの行動に青筋を浮かび上がらせながらも、額に手をあてて冷静になるようにと息をつく。
「主……酔っているといえどもやっていいことと駄目なことの区別はつけるべき……」
「かせん……さむいの、あったかくして……」
突然体が重たくなったと思うと、倒れこんだ歌仙の肢体に、跨るようにして審神者は腰をおろす。それから上半身をぴっとりと密着させるように審神者がくっつくと、耳には熱い息がかかる。
酒とほのかに甘い女性の香りがして、説教の言葉も思わず止まってしまう。さらに頭を抱えたくなるような事態であるにもかかわらず、下半身には熱がじわじわと集まってくる。薄い浴衣と下着一枚しか着ていない審神者の体は歌仙にとって非常に毒であった。
審神者はどちらかといえば積極性がない。大抵は審神者が下で歌仙が上、もしくは審神者が四つん這いになったところを歌仙が抱き込んだり、いずれにしても歌仙が優位な体勢で事に及んでいた。感じたことのない圧迫感が歌仙を襲う。
女性独特のやわらかな肉体に己の欲望のかたまりが圧迫されることがこんなにもたまらないことだと、歌仙は知らなかったのだ。それに加えて審神者のまるで男を誘うようなつたない言葉。歌仙の理性を砕くのには充分であった。
「んっ、……かせんのここ、固くなってる……」
「あるじっ、さわっては、っ……あ……」
「あったかい……あっ、びくってしたぁ」
審神者は体を捻って振り向くと、己の臀部で押しつぶしていた物の存在に気がついた。乱れた浴衣越しにそれを人差し指ですりすりと撫でると、大きく反応を示す。女性に組み伏せさせられ、もはや自尊心もずたずたに引き裂かれた歌仙は顔を赤らめながら、うわずった声を漏らしてしまう。
歌仙のそれをあたたかいと言って審神者は浴衣の中に手を潜りこませると、にんまりと口角を上げながら優しい手つきでそれを包み込んで上下にこする。
「あっ、やめ……っ、あるじ、やめるんだ……!」
すりすりと愛でるようにこすり続ける審神者の姿を見て、やはりいつもとは違うと歌仙は確信した。でないとこんなことするはずがない。むしろ自分にそう言い聞かせたかった。しかし快楽は快楽。相手が酔っていようと関係なくそれは歌仙の欲を増幅させる。
初めて自分の物が恋人の手に握られ、優しく包まれていることに興奮しないわけがない。どきどきと高鳴る胸には、やめさせなければというなけなしの理性とこのままもっと主の掌で弄ばれたいという気持ちが混在しており、歌仙は頭を抱えながら快楽の淵に飲み込まれていった。
やはり愛しい人の積極的な姿には抗うことなどできないのだ。初な恋人に触られた逸物はあっという間にそそり立ち、鈴口から溢れた汁が棒を伝い、審神者のてのひらを汚す。相変わらず上にのしかかられたままの歌仙はもう抵抗する気力もなく、嬌声を出さないように必死で声を押し殺すしかなかった。
明日、目が覚めたら絶対に説教をしなければならない。そう考えていた時、審神者はするりと自分の浴衣の紐を解き、素肌をさらけ出す。月明かりに照らされた審神者の体はいつもに増して美しく見えて、思わず物欲しさに体が震えてしまう。 その体に吸いつきたい気持ちで眺めていると、審神者は自ずから下着を脱ぎ、竿を手で支えてゆっくりと腰を下ろしてしまう。絡みつく体液の熱さと、得られた至福の快楽に歌仙も思わず息を荒げてしまう。
「待つ、んっ……はぁ、ん、あるじっ」
「あっ、ん……あったかい……奥がじんじんして、きもちい……」
素直な、心の底からそう思っているような幸せに歪んだ顔で審神者は歌仙を見下ろす。ぷっつりと、歌仙の理性を繋いでいた糸の切れる音がした。
審神者の両腕を掴み、一気に押し返すと、歌仙は体勢を立てなおして審神者の奥を物で突き上げる。審神者も制止をしないので、歌仙はただ思うままに膣内をかき混ぜるように腰を動かす。
ぐちぐちと耳にこびりつく粘液の音と、審神者の我慢するような嬌声に余計興奮してしまって、物が主の膣内で膨らんだ気がした。
ばちりと目が合うと、審神者は赤らんだ頬のまま歌仙の背中に手を回し、ぎゅっと抱き寄せる。その行動が本能のまま温かいものを求めているのか、恋人を求めているものなのか、歌仙にとっては後者であってほしかったが、現状、そんなことを問いただしても答えられるような頭ではなさそうだ。
自分の下で蹂躙されている彼女の体が愛おしく、何度も痕をつけるように噛みついた。どこを噛んでも柔らかく、ほのかに甘い色香がして、ますます離れがたくなった。
痛みに耐えて身震いする仕草も、背中を引っ掻く爪の感触も、知っているのは自分だけでいい。他の男になんてくれてやるものかと執着心をぶつけるような思いで主を抱いた。この人には自分だけだ。自分しかいないとわかっていても脳裏には不安がよぎる。
彼女が酒の勢いでこんなことをやっているのならもう金輪際酒は呑ませてはならないし、宴の席では自分の目の届かないところには決して置かせないと、所有物の証である白濁を彼女に注ぎながら誓った。
PAGE TOP